データウェアハウス(DWH)とは?
データウェアハウス(DWH)は、会社内のさまざまなデータソースから情報を集め、蓄積するデータサーバです。データウェアハウスを直訳すると「データの倉庫」という意味です。データウェアハウスの概念は1980年代に生まれました。定期的にデータを集めて時系列に蓄積することで、さまざまな集計・分析が可能になり、ビジネス上の意思決定を助けます。
データは「抽出、変換、ロード(ETL)」のプロセスを経てデータウェアハウスに取り込まれます。様々な情報源からのデータが統合され、分析やレポート作成に利用できる形になるのです。
データウェアハウス(DWH)の詳細
データウェアハウスは、日々の運営から意思決定に至るまでの幅広い業務を支える設計モデルです。企業が、長期にわたって蓄積した大量のデータを分析するときに利用されます。
データウェアハウスでは、様々なソースから得たデータを一箇所にまとめ、必要に応じて加工・保存します。企業は、従業員の情報・給与・製品・顧客情報・売上・請求書など多岐にわたるデータを保持しています。例えば企業のCEOが「コスト削減に関する情報」を求めた場合には、集めたデータの分析が必要になるでしょう。データウェアハウスは、異なる種類の生データを基に、企業が適切な意思決定を行えるようサポートしてくれるのです。
他にも企業はデータウェアハウスを利用して、製品の需要や地域別の売上データなどを調査し、効果的なマーケティング戦略を立てることができます。日常的な運営データと異なり、データウェアハウスには過去の集約データが含まれており、上手に活用することで重要なビジネス判断を行えるのです。データウェアハウスの活用にはコストや労力がかかりますが、それに見合うメリットがあるので、多くの大企業がデータウェアハウスを利用しています。
データウェアハウスとデータレイクの違い
データウェアハウスと混同しやすい言葉として「データレイク」があります。主な違いは、データの構造化状態、目的、および使用方法にあります。
- データウェアハウス:構造化データ(整理されて表形式で保存されるデータ)を格納するシステムです。主にビジネスの意思決定をサポートするために設計されており、履歴データを分析してレポートやダッシュボードを作成するのに適しています。
- データレイク:構造化データだけでなく、非構造化データ(テキストファイル、画像、動画など)や半構造化データ(JSON、XMLなど)も格納できるシステムです。データレイクはデータの保存と分析の柔軟性を提供し、大量の生データをそのままの形式で保管し、必要に応じて分析や処理ができます。
データウェアハウスは整理されたデータに対する洗練された分析を提供し、データレイクはさまざまな形式のデータを保管し、より柔軟な分析を可能にします。
データウェアハウスとデータベースの違い
データウェアハウスは「データベースの一種」ということもできますが、目的・データの種類・使用方法に違いがあります。
長期的な分析に重点を置く「データウェアハウス」
- 目的:データウェアハウスは、企業の運営によって得られる大量のデータから情報を抽出し、意思決定を支援するために設計されています。
- データの種類:異なるソースからのデータを統合して、分析やレポート作成のために利用します。
- 使用方法:履歴データの大規模な分析や複雑なクエリを実行するために使用され、時間の経過に伴うトレンドの分析や予測などに利用されます。
日常的な業務に焦点を当てる「データベース」
- 目的:データベースは、日常のトランザクションや業務運営に必要なデータを管理・格納するために使用されます。
- データの種類:特定の業務やアプリケーションのために、詳細な記録を保持します。
- 使用方法:リアルタイムのデータ管理やトランザクション処理(注文の記録・在庫管理・顧客情報の更新など)に使用されます。
データウェアハウスはデータの統合と長期的な分析に重点を置き、データベースは日常的な業務とトランザクションの処理に焦点を当てています。データウェアハウスは組織全体の意思決定プロセスをサポートするために使われる一方で、データベースは特定のアプリケーションや部門の運用に直接関連するデータを管理するために使用されるのです。
データウェアハウスとデータマートの違い
データウェアハウスと一緒に取り上げられることも多い「データマート」ですが、範囲・目的・利用者に違いがあります。
組織の全体をカバーする「データウェアハウス」
- 活用範囲:組織全体のデータをカバーし、様々なソースから大量のデータを統合します。
- 目的:企業全体の意思決定をサポートするために設計されており、広範な分析とレポート作成のために使用されます。
- 利用者:組織全体の幹部や分析者など、さまざまな部門のユーザーが利用します。
特定の分野に特化した「データマート」
- 活用範囲:特定のビジネス領域に焦点を当てます。例えば、販売・マーケティング・財務など、特定の分野で活用されます。
- 目的:特定の分析やレポートのために使用する、より小規模でターゲット指向のデータベースです。
- 利用者:主に特定の部門やチームのメンバーが使用します。
データウェアハウスは組織全体のデータニーズを満たすために広範なデータを集めるのに対し、データマートは特定の分野・部門に特化して使用されます。データマートはデータウェアハウスからデータを取得することもあれば、独立して機能することもあります。
データウェアハウスの活用事例
データウェアハウスは、さまざまな業界で活用されています。代表的なデータウェアハウスの活用事例は、以下のとおりです。
1. 企業内データの分析:データウェアハウスは、企業のデータを集約し、分析するために使われます。売上分析、顧客行動の分析、市場トレンドの追跡などを行い、より情報に基づいた意思決定を行います。
2. リアルタイムレポートとダッシュボード:データウェアハウスを利用して、リアルタイムでビジネスのパフォーマンスを追跡できます。ダッシュボードを通じて、売上、在庫レベル、顧客エンゲージメントなどのキーパフォーマンス指標(KPI)を視覚化し、迅速な意思決定を支援します。
3. 顧客関係管理(CRM):データウェアハウスは、顧客情報の集約と分析にも使われます。顧客の購買履歴、好み、フィードバックなどのデータを分析することで、顧客満足度の向上、パーソナライズされたマーケティング戦略の策定、顧客ロイヤルティの強化に役立てられます。
4. 金融分析:銀行や投資会社では、データウェアハウスを使って金融市場の分析、リスク管理、規制遵守レポートの作成などを行います。市場の変動を理解し、リスクを管理し、規制要件を満たすことができます。
5. サプライチェーン管理:製造業や小売業では、データウェアハウスを活用してサプライチェーンの効率を分析し、最適化します。在庫管理、供給者のパフォーマンス評価、物流の最適化などのプロセスを通じて、コスト削減とサービス品質の向上を図ります。