多要素認証(MFA)とは?
多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)とは、オンラインアカウントやシステムへのアクセスを保護するために、2つ以上の異なる認証方法を組み合わせるセキュリティ手法です。「知識情報」「所持情報」「生体情報」を用いて行われ、単一の認証手段よりもはるかに高いセキュリティレベルを提供します。
MFAのわかりやすい例として、ATMでの取引が挙げられます。ATMからお金を引き出すためには、キャッシュカード(所持情報)と暗証番号(知識情報)の2つが必要です。さらに静脈(生体情報)で本人確認をすれば、3つの認証方法でMFAを行ったことになります。
2要素認証と2段階認証の違い
MFAを理解する際に勘違いしやすいのが「2要素認証」と「2段階認証」の違いです。両方ともセキュリティを高めるための手法ですが、この2つには明確な違いがあります。
- 2要素認証:2要素認証(2FA)は、多要素認証(MFA)の一種であり、2つの異なる認証要素を組み合わせます。「知識情報」「所持情報」「生体情報」の内の異なる2つを使用するのが2FAです。2FAは、攻撃者が1つの認証要素を突破しても、別の認証要素がなければアクセスできないようにしてセキュリティを強化します。
- 2段階認証:2段階認証は、2つの「段階」を経てユーザーを認証するプロセスです。認証要素が同じ(例えば、2つの異なるパスワードを使用する)場合もありえます。2段階認証では、ユーザーが2つの別々の認証ステップを踏みますが、必ずしも異なる種類の認証要素を組み合わせるわけではありません。
つまり、2FAは認証の「種類」に焦点を当てており、2段階認証は「ステップ数」に焦点を当てています。一般的に2FAは2段階認証よりもセキュリティが高いと考えられていますが、どちらもセキュリティを強化するための有効な手段です。
MFAの認証方法の種類
MFAは、以下の3種類の認証要素を組み合わせて行われます。
- 知識情報:ID、パスワード、電話番号、生年月日など、ユーザーが知っている情報。スピーディーなログインができるので便利だが、忘れたり第三者に推測される可能性がある。
- 所持情報:スマートフォン、ICカード、ワンタイムパスワードなど、ユーザーが物理的に持っているもの。端末があれば簡単にログインできるが、紛失のリスクがある。
- 生体情報:指紋、静脈、顔認証など、ユーザーの生体情報。複製やなりすましが困難なのでセキュリティを強化しやすいが、情報漏洩や偽装のリスクは残る。
MFAは、上記の3つのうち2つ以上の異なる認証要素を組み合わせます。ファイアウォールやウイルス対策ソフトと合わせて使用することで、マルウェアなどの脅威からシステムを守る防御策となります。
MFAが必要な理由
MFAが必要な理由は、デジタル環境のセキュリティを強化し、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを減少させるためです。MFAが特に重要である理由は、以下の通りです。
- セキュリティリスクの回避:オンライン上のサイバー攻撃は年々、高度になっています。フィッシング攻撃やDDoS攻撃、重要なデータを暗号化して身代金を要求するランサムウェアなど、種類も多様化しています。MFAは、それらの攻撃に対する防御手段として有効です。
- パスワードの脆弱性:多くの人が弱いパスワードを使用したり、複数のアカウントで同じパスワードを使い回しています。このような行動は、ハッカーがパスワードを推測したり、漏洩した情報を基にアクセスするリスクを高めます。MFAは、パスワードだけに依存しない追加のセキュリティを提供します。
- リモートアクセスとモバイルデバイスの普及:リモートワークやモバイルデバイスの利用の増加に伴い、会社や家庭など従来のネットワーク以外でのセキュリティ対策が必要になっています。VPNなどの技術と合わせてMFAを利用することで、遠隔地からのアクセスの安全性も高められます。