スパイウェア

信頼の理由

スパイウェアとは?

スパイウェアとは、コンピューターに侵入後、個人情報を収集して無断で拡散するソフトウェアです。インターネットの閲覧履歴・キーボード入力(キーストローク)・ログイン情報・クレジットカード番号などの機密データを、ユーザーに隠れて収集し、外部に送信します。

スパイウェアの目的は、主に2つです。1つは、マーケティング活動に利用するためです。多くの人が、自分の閲覧履歴や興味に基づいて表示されるインターネット広告を見たことがあるはずです。企業はユーザーの興味や行動を分析し、ターゲット広告を表示します。

もう1つは、個人情報を盗むためです。悪意を持ってクレジットカード番号や銀行口座情報などの個人情報を抜き取り、不正にアクセスします。

スパイウェアとマルウェアの違い

スパイウェアとよく混同される言葉に「マルウェア」があります。マルウェアは「悪意のあるソフトウェア(Malicious Software)」の略で、コンピューターやネットワークに損害を与えるソフトウェアの総称です。一方でスパイウェアは、情報収集と監視に特化したソフトウェアです。

つまりスパイウェアは、マルウェアの1カテゴリーだと言えます。

スパイウェアの種類と特徴

スパイウェアには様々な種類が存在します。代表的なスパイウェアの種類と特徴は、以下のとおりです。

アドウェア

アドウェアは、強制的にデバイス上に広告を表示させるソフトウェアです。インターネットを閲覧しているときやアプリケーションを使用しているとき、ポップアップ広告やバナー広告が突然表示される場合があります。これは、アドウェアによって引き起こされるものです。

アドウェアはマーケティングの目的で使われることもありますが、ユーザーの情報を外部に送信して悪用される可能性もあるため、注意が必要です。

トラッキングクッキー

トラッキングクッキーは、ユーザーのウェブサイト閲覧履歴や行動を追跡するスパイウェアです。ユーザーの興味や好みを学習し、パーソナライズされたコンテンツや広告を提供するために使用されます。

必ずしも悪用されるとは限りませんが、ユーザー情報を収集し、ときには第三者と共有することでプライバシーを侵害する可能性があります。

トロイの木馬

トロイの木馬は、無害(または有用)なソフトウェアと見せかけ、実行するとシステムに害を及ぼすよう設計されたマルウェアです。トロイの木馬を実行すると、スパイウェア・ウイルスランサムウェアなどによる攻撃が開始され、個人情報の漏えいやシステム損害などを引き起こします。

キーロガー

キーロガーは、コンピューター上で打たれるキーストローク(キーボードでキーを押す動作)を、秘密裏に記録するマルウェアです。キーロガーは、ユーザーがキーボードを使って入力するすべての情報を捕捉し、攻撃者に送信します。

キーロガーの目的は、主に情報収集です。攻撃者は集めたデータを利用して、銀行口座の乗っ取り・身元詐称・詐欺行為などに利用します。企業のスパイ活動に利用されることもあります。

スチールウェア

スチールウェアは、ユーザーをだまして別のサイトに誘導し、オンラインショッピングサイトから不正に報酬を得るためのスパイウェアです。ユーザーがオンラインショッピングサイトに訪れたとき、スチールウェアはユーザー訪問を検知します。

サイトから離脱しようとすると、偽のメッセージ警告を表示します。ユーザーはこれだまされ、別サイトに誘導されることがあります。結果として攻撃者は、アフィリエイト報酬などの収益を不正に取得します。

システムモニター

システムモニターは、強化版のキーロガーです。コンピューター上で起きたすべてを記録します。電子メール・チャットの内容・使ったプログラム・アクセスしたウェブサイト、ビデオなど、ユーザーの活動をくまなく監視します。

なかには、侵入したコンピュータの防御力と弱点を評価し、外部の攻撃者に知らせる「システムモニター」も存在します。

スパイウェアの感染経路

スパイウェアの感染はどのような経路で起きるのでしょうか?代表的な感染経路は、以下のとおりです。

フィッシングメール

フィッシングメールにだまされ、リンクをクリックしたり添付ファイルを開くことでスパイウェアに感染することがあります。フィッシングメールは、信頼できる組織や企業を装うことが多いので、注意が必要です。

ソーシャルエンジニアリングなどの方法で人間の心理的な弱点を悪用し、メールの添付ファイル内のマルウェアをインストールさせるような巧妙な攻撃が行われることもあります。

広告

広告にスパイウェアが潜んでいる場合もあります。ブラウザのポップアップウィンドウ、ウェブページの広告などをクリックすることで感染する場合もあるので気をつけましょう。

悪意のあるウェブページの閲覧

ウェブサイトにアクセスすることで、スパイウェアが自動的にダウンロードされることもあります。リンクをクリックしなくても、サイトを閲覧するだけで感染してしまうこともあるので注意が必要です。

フリーソフトや違法サイトのダウンロード

無料で利用できるフリーソフトや、違法なダウンロードサイト・共有サイトからファイルをダウンロードすることで、感染することもあります。フリーソフトには便利なものも多いですが、ダウンロードの際には安全性を確認するようにしましょう。

スマートフォンへの攻撃

スマートフォンもスパイウェアによる攻撃対象です。ゲームや便利なツールアプリをダウンロードすることで、感染する可能性もあります。GoogleやAppleも、すべての不正アプリを100%締め出すことは不可能です。ダウンロード時は個人の注意が必要です。

スパイウェアに感染するとどうなる?

スパイウェアに感染すると、様々なリスクを抱えることになります。代表的な症状は、以下のとおりです。

プライバシーの侵害

スパイウェアは個人情報を盗み出し、インターネットの閲覧履歴・キーボード入力・個人的なファイルなど、機密情報を漏洩させます。

パフォーマンスの低下

デバイスの動作が遅くなったり、頻繁にフリーズすることがあります。スパイウェアはコンピュータのリソースを消費するため、動作に影響を及ぼすのです。

広告の表示

スパイウェアは、不要な広告(ポップアップ広告など)を表示させることがあります。これらの広告には、別のマルウェアに感染させるためのリンクが含まれていることもあります。

不正アクセスや詐欺のリスク

盗まれた情報を悪用され、不正アクセスや詐欺が行われる可能性もあります。データを暗号化するランサムウェアに利用されたり、感染したデバイスがDDoS攻撃に利用されるケースもあります。

スパイウェアの検出方法

スパイウェアは基本的に目立たないよう設計されているため、検出は難しいとされています。しかし、コンピュータの挙動を見ることで、スパイウェアを検出できる場合があるので、以下のような兆候があるときは感染を疑いましょう。

  • パフォーマンスの低下:コンピュータやスマートフォンの動作が通常より遅い場合は、スパイウェアがシステムのリソースを占有している可能性があります。
  • ポップアップ広告が多い:ポップアップ広告の数が多すぎる場合は、スパイウェアの一種であるアドウェアに感染しているのかもしれません。
  • データ使用量の異常:データ使用量が突然増えた場合は、スパイウェアがデバイスから情報を送信している可能性があります。
  • バッテリーの消耗:スマートフォンのバッテリーの消耗が激しい場合も、スパイウェア感染の可能性を疑いましょう。
  • 不正な取引:銀行口座や取引明細に、異常がないかをチェックしてください。スパイウェアによって個人情報が盗まれ、不正に使用される可能性があるためです。早期に発見することで、被害を最小限に抑えることができます。
  • 異常なシステム動作:デバイスが頻繁にクラッシュしたり、エラーメッセージが表示するなど、異常な動作をしている場合は感染している可能性があります。

上記のような兆候が出た場合は、スパイウイルスへの感染を疑いましょう。またウイルス対策ソフトによるスキャンで、検出できる場合もあります。

スパイウェアの駆除方法

デバイスがスパイウェアに感染している場合は、駆除を行う必要があります。まずインターネット接続を切り、データ漏洩を防ぎましょう。次に、信頼できるウイルス対策ソフトウェアを使って、デバイス全体をスキャンしてください。スパイウェアが見つかった場合、ウイルス対策ソフトウェアの指示に従って隔離あるいは削除します。

スパイウェアを削除した後、不正アクセスを防ぐため、メールやオンラインバンキングなど、重要なアカウントのパスワードをすべて再設定しましょう。

スパイウェアの感染を防ぐための対策方法

スパイウェアに感染しないために、どのような対策を行うべきでしょうか?適切な対策を取ることで、被害やリスクを最小限に抑えることができます。スパイウェアの対策方法は、以下のとおりです。

セキュリティ対策の実施

適切なセキュリティ対策を行いましょう。ウイルス対策ソフトを導入して、常に最新状態に更新します。ファイアウォールVPNの設定を定期的に見直すことも重要です。

怪しいメールやリンクを開かない

迷惑メールやメール内のリンク、添付ファイルには特に注意しましょう。広告が出てきても、むやみにクリックしないよう気をつけてください。

信頼できるソースからのダウンロード

ソフトウェアをダウンロードする際は、信頼できるサイトや開発者からダウンロードしましょう。詳細情報をよく読み込むだけでも、スパイウェアを防ぐ可能性が上がります。

スマートフォンにアプリをダウンロードするときは、公式アプリストアを使うようにしましょう。

ソフトウェアとブラウザの定期的な更新

ソフトウェアやブラウザを最新の状態に保ち、セキュリティを強化しましょう。常に最新状態に更新しておくことで、サイバー攻撃に対する脆弱性を減らせます。

広告ブロッカーの使用

アドウェアやスパイウェアのリスクを減らすために、広告ブロッカーやブラウザの広告ブロック機能を使用しましょう。ただし一部の広告ブロックソフトウェアは、ユーザーの行動を追跡している可能性があるので注意が必要です。

従業員教育

企業では従業員に対する意識向上トレーニングを行い、スパイウェア対策の知識を共有することも重要です。セキュリティ対策への投資は、最も効率の良い対策の一つと言えます。

これらの対策を組み合わせることで、スパイウェアの感染リスクを大幅に減少させることができます。

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Marshall Gunnell
IT and Cyber ​​Security Specialist
Marshall Gunnell
IT・サイバーセキュリティ専門家

米ミシシッピ州出身のマーシャル・ガンネルは、10年以上の経験を持つITおよびサイバーセキュリティの専門家です。Techopediaに加えて、Business Insider、PCWorld、VGKAM…...