ステーブルコインとは

信頼の理由

ステーブルコイン(Stable Coin)とは、その価値が他の資産に連動するように設計された仮想通貨です。ステーブルコインはビットコインなどの一般的な仮想通貨とは違い、価格変動が小さく、資産のリスク管理やグローバル取引の決済手段として利用されています。

本記事では、ステーブルコインの特徴、仕組みについて解説し、日本で購入可能なステーブルコインについて紹介します。

ステーブルコインとは?

デジタル空間の中でステーブルコインの価格変動を監視する2体のAIロボット

ステーブルコインとは、価値が安定しているその他の金融資産(米ドルなどの法定通貨や仮想通貨、コモディティなど)を担保とし、それらの価格と連動するように設計された仮想通貨です。仮想通貨特有の激しいボラティリティを抑え、安定した通貨価値を提供することを目的としています。

たとえば、米ドル価格に連動するように設計されたステーブルコイン「テザー(USDT)」は、その価値が常に1USDT=1ドル前後を維持していることが確認できます。

USDTと米ドルの価格変動を示すチャート

引用:Google Finance

こうした仕組みにより、仮想通貨市場の価格変動が大きい時期でも、ステーブルコインは安定した価値を維持できるため、投資家やユーザーにとって信頼性の高い資産として利用されます。

ステーブルコインの3つの特徴

ステーブルコインは以下の3つの特徴によって、仮想通貨市場における安定した基盤資産として、国際取引や金融サービスの多くの場面で注目されています。

  • コイン価格の安定性
  • 担保資産の多様性
  • 低コストかつ即時決済

それぞれポイントを解説します。

コイン価格の安定性

ステーブルコインは、仮想通貨市場において、安定した資産として重要な役割を果たしています。担保とする資産の価格と連動するため、価格が安定しやすい傾向があるためです。

一方で、将来的な価格上昇は連動する通貨に依存するため、ステーブルコインは投資対象としての魅力に欠けます。将来的なリターンを狙って長期でガチホしたい仮想通貨とは異なる性質を持つコインであることは理解しておきましょう。

仮想通貨投資で利益を狙いたいなら、将来性が期待されるミームコインに先行投資するのがおすすめです。たとえば、現在進行中のプレセールで巨額の資金を集めるPepe Unchained(PEPU)は、2024年最も注目すべきミームコインの1つです。このようなプレセール仮想通貨を購入する際にも、ステーブルコインは必要になります。

担保資産の多様性

ステーブルコインは、仮想通貨市場のボラティリティが激しい時期の安全通貨として利用されるケースもあります。法定通貨や仮想通貨、コモディティなど、その価値を様々な資産と連動させており、担保資産の多様性があるためです。

低コストかつ即時決済

グローバルな国際間取引における決済手段として有効です。イーサリアムやスイ(SUI)などのブロックチェーン技術により、従来の銀行システムに比べて低コストで即時決済が可能となっています。

DAO(分散型自律組織)やDeFi(分散型金融)の分野でもステーブルコインの需要が高まっており、資産の流動性を確保するための重要な決済手段となっています。これにより、ステーブルコインは他の金融サービスとも密接に連携し、今後ますますその影響力を拡大していくでしょう。

ステーブルコインの種類

ステーブルコインは、その価値を裏付けする資産の種類によって、主に以下の4つの種類に分類されます。

ステーブルコインの種類 特徴 代表的なコイン
法定通貨担保型 米ドルやユーロなどの法定通貨を担保に価格が連動 テザー(USDT)
USDコイン(USDC)
仮想通貨担保型 ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を担保に価格が連動 sUSD(Synthetix USD)
Liquity USD(LUSD)
コモディティ担保型 金や銀、原油などのコモディティを担保に価格が連動 Paxos Gold(PAXG)
ジパングコイン(ZPG)
アルゴリズム型 担保資産を持たず、アルゴリズムにより供給量を調整して価格をコントロール フラックス(FRAX)
アンプルフォース(AMPL)

それぞれのステーブルコインの特徴を詳しく見てみましょう。

法定通貨担保型ステーブルコイン

法定通貨担保型ステーブルコインは、米ドルやユーロなどの各国政府が発行する法定通貨にその価値が連動しているのが特徴です。この種類のステーブルコインは、政府発行通貨や国債などの政府が発行する債権など、流動性および信頼性の高い資産によって通貨価値が裏付けされています。

法定通貨担保型ステーブルコインの代表例には、USDT(テザー)やUSDコイン(USDC)などがあります。基盤となる法定通貨と1対1で交換可能な価値を維持するように設計されており、逆に法定通貨をステーブルコインに交換することも可能です。仮想通貨市場のボラティリティが激しい時期に、投資家が資産を安全に維持する手段として利用されるケースがあります。

仮想通貨担保型ステーブルコイン

仮想通貨担保型ステーブルコインは、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を担保にして発行されるコインです。ただし、価値を担保する仮想通貨そのものの価格変動が激しいため、発行されるステーブルコインに対して超過担保するケースが一般的です。たとえば、担保にする仮想通貨の価値が下がっても対応できるよう、発行されるステーブルコインの価値を上回る担保を確保します。

一方で、この種類のステーブルコインは、ブロックチェーン技術を使って発行・管理されるため、準備金に関するデータをリアルタイムで確認することができる高い透明性が特徴。ユーザーは、市場が不安定な時でも常に最新情報をチェックすることができます。さらに複数の仮想通貨を担保とすることで、リスク分散が可能になるメリットがあります。

コモディティ担保型ステーブルコイン

コモディティ担保型ステーブルコインは、金や銀、原油などの物理的なコモディティ(商品)価格を担保として発行されます。コモディティに裏付けされたステーブルコインは、物理的な資産への直接的な投資手段を提供するため、実物商品を保持したい投資家に人気があります。

コモディティ担保型ステーブルコインは、インフレ対策としても有効であり、特に金価格がインフレに対するヘッジ資産と見なされることから、経済の不安定期に需要が高まる傾向にあります。価格の基盤となるコモディティの価値が相対的に安定していることから、ポートフォリオの多様化を図る手段としても利用されています。

アルゴリズム型ステーブルコイン

アルゴリズム型ステーブルコインは、特定の資産を担保にせず、独自のアルゴリズムを利用して市場の供給量を調整します。この仕組みによって、価格の安定を図ることが特徴です。具体的には、価格が下がった場合に流通量を減らし、価格が上がると供給量を増やすことで、需要と供給のバランスを取りつつ、価値の安定を図ります。

アルゴリズム型ステーブルコインは、法定通貨や仮想通貨、コモディティなどの資産を担保としないため、価格の安定性がアルゴリズムの信頼性に大きく依存しています。そのため、他の担保型ステーブルコインと比較してリスクが高く、価格が不安定になる可能性が懸念されています。

ステーブルコイン銘柄と国内仮想通貨取引所

コインを数えるAIロボット

ステーブルコイン市場は急速に拡大を続けており、2024年時点において、仮想通貨市場で流通しているステーブルコインは約200銘柄以上に達していると言われています。しかし、その大部分は海外での取引が中心であり、日本国内で購入できるステーブルコイン関連銘柄は限られています。

たとえば、Margexなどおすすめの仮想通貨取引所で購入可能なステーブルコイン一覧には、以下の2つが挙げられます。これらのコインは、各取引所が発行元と提携しており、取引所を通じて安全に購入することが可能です。

日本で購入可能なステーブルコインの例 基準資産 国内仮想通貨取引所の例
ダイ(DAI) USD Coincheck、GMOコイン
ジパングコイン(ZPG) GOLD DMM Bitcoin、SBI VCトレード

世界的に主要なステーブルコインであるテザー(USDT)やUSDコイン(USDC)は、2024年現時点において、国内の仮想通貨取引所で購入することはできません。これらのステーブルコインを取引したい場合、海外の仮想通貨取引所を利用する必要があります。

ただし、海外の仮想通貨取引所は日本の金融庁の許可を得ておらず、無登録で仮想通貨交換業を行っているとして警告が出されています。ご利用する際は、十分にご注意ください。

参考ページ:無登録で暗号資産交換業を行う者の名称等について

ステーブルコインの仕組み・購入方法

ステーブルコインは、その担保となる資産の価値に基づいてコインの価格を安定させる仕組みで成り立っています。たとえば、USDTは米ドルに連動し、発行元が資産を適切に管理することで1USDT=1ドルの価値が維持されるよう設計されています。

以下では、ステーブルコインの購入方法について紹介します。実際の取引の流れは以下のとおりです。

  1. 担保となる資金の預け入れ
  2. ステーブルコインの発行(ミント)
  3. ステーブルコインの焼却(バーン)

それぞれの流れを見てみましょう。

①:担保となる資金の預け入れ

ステーブルコインの購入方法は、一般的なビットコインの買い方と同じです。購入したいステーブルコインの取り扱いがある仮想通貨取引所の口座を開設後、担保となる資金を預け入れることで、ステーブルコインを発行(ミント)してもらうことができます。通常、預け入れる資産には、米ドルやユーロなどの法定通貨や仮想通貨などが含まれます。

たとえば、1USDTを発行する場合、ユーザーは1ドル相当の資産を発行元に預け入れます。発行元は、その資産を銀行口座や信頼性の高い資産として保管・管理し、これによってステーブルコインの価値が裏付けられる仕組みです。

②:ステーブルコインの発行(ミント)

ユーザーが担保資産を発行元に預け入れると、発行元はその資産価値に応じたステーブルコインを発行(ミント)します。このプロセスにより、ユーザーは預け入れた担保資産と同等の価値を持つステーブルコインを受け取ることができます。

たとえば、1,000ドルを発行元に預け入れると、発行元は1,000USDT(1USDT=1ドル)を発行し、ユーザーに提供します。これにより、担保資産がステーブルコインというデジタル資産として利用可能になります。

③:ステーブルコインの焼却(バーン)

ステーブルコイン発行後、再び法定通貨に戻したい場合、ユーザーは発行元にステーブルコインを返却し、担保資産として預け入れした法定通貨を返してもらうことが可能です。この際、発行元は返却されたステーブルコインを市場から焼却(バーン)し、ステーブルコインの供給量を調整して価格の安定を維持します。

たとえば、ユーザーが1,000USDTを発行元に返却すると、発行元はその1,000USDTをバーンし、対応する1,000ドルをユーザーに返還します。このようにして、ステーブルコインの価格は担保となる法定通貨との1対1の価値を保つことが可能になります。

ステーブルコインを購入する際に注意すべきこと

現在、多くのステーブルコイン発行元は銀行免許を取得しておらず、預金保護制度の対象外となっています。そのため、ステーブルコインの発行元が倒産した場合、ユーザーは預け入れた資産を失う可能性(カウンターパーティーリスク)があります。

たとえば、ステーブルコインの代表的な発行元であるテザー(USDT)は、長年にわたって信頼を築いてきましたが、テザーは銀行免許を取得していません。また、一部のステーブルコイン発行元では、運営実態の不透明性が懸念されていたり、資産管理方法に不確実性が指摘されるなどの問題があり、ユーザーは発行元の信頼性や安全性を十分に考慮する必要があります。

ステーブルコインは仮想通貨市場で安定した価値を提供する手段として有効であるものの、発行元に対する信用リスクが存在するため、取引する際は信頼性や安全性を十分に考慮することが重要です。

ステーブルコインのまとめ

デジタル空間の中でコインを拾い集めるAIロボット

ステーブルコインとは、仮想通貨市場において安定した価値を提供するために設計されたアルトコインです。米ドルやユーロなどの法定通貨や貴金属などの資産と価値を連動させることで、ビットコインなどの従来の仮想通貨に比べて価格変動が少なく、通貨価値としての安定性を維持する特徴があります。グローバルな国際間取引の決済手段や資産管理の手段として広く利用されています。

ただし、発行元の多くは銀行免許を取得していません。万が一、発行元が破綻した場合、ユーザーは預けた資産を失う可能性(カウンターパーティーリスク)があることを十分に理解しておく必要があります。

ステーブルコインはICO仮想通貨などを購入するときに必要となります。もし仮想通貨で利益を上げたいなら、ステーブルコインを今のうちに準備していたほうがよいでしょう。

ステーブルコインに関するよくある質問

Q1.ステーブルコインのデメリットは?

Q2.ステーブルコインとビットコインの違いは?

Q3.ステーブルコインは日本で流通している?

Q4.ステーブルコインは何のために利用されている?

Q5.ステーブルコインの代表例は?

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Hiroshi O.
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Techopedia(テコペディア)ライター兼エディター。2018年から仮想通貨の投資経験を持つ。20年からは個人ブロガーとして、AI(人工知能)を中心に記事を執筆。24年2月、Techopediaに…...