世界中で環境問題への対策が急がれる中、テクノロジー業界は厳しい監視の目にさらされています。環境への悪影響が懸念されるテクノロジー業界において、持続可能な未来を実現するために注目されているのが、「グリーンコンピューティング」と「都市鉱山」という2つの概念です。
グリーンコンピューティングは、テクノロジーが環境に与える影響をできる限り減らすことを目標としています。一方で都市鉱山は、廃棄された電子製品の処理方法を見直す取り組みです。グリーンコンピューティングと都市鉱山の2つが組み合わさることで、持続可能なデジタル社会の実現が進んでいくのです。
本記事では、グリーンコンピューティングと都市鉱山に関する調査をもとに、テクノロジー業界がどのような問題に直面しているかを探ります。2つの取り組みが環境問題にどのように影響し、新しい可能性を開いてくれるのか、詳しく見ていきましょう。
よりグリーンなテクノロジー業界を目指して:グリーンコンピューティングの採用
2022年にStatistaが世界中のIT関係者2900人に行った調査によると、回答者のうち69%が「ITインフラの持続可能性が、自社の重要課題である」と答えました。
同じく69%の人が「増大するデータ利用による環境への影響を管理する計画があり、温室効果ガス排出量の削減やカーボンニュートラルを実現するための科学的な目標に取り組んでいる」と回答しています。
出典:Statista
回答者の68%は、顧客がグリーンコンピューティング対策による二酸化炭素排出量の削減を求めていると認識しています。
さらに67%が、IT機器やITインフラが環境に与える影響を測定し、抑制するための取り組みを開始したと回答。65%は炭素削減に焦点を当てたITパートナーとのみ提携すると述べています。
上記の結果は、テクノロジー業界における「持続可能性の重要度」の高まりを表していると言えるでしょう。
データセンターでのエネルギー使用の最適化
エネルギー使用に関して、大きな成果が見られた場所の1つがデータセンターです。データセンターは多くのエネルギーを消費し、環境にも影響を与えるため、エネルギー効率の改善は重要な課題と言えます。
Statistaが世界中の669人のデータ管理者に対して調査したところ、最大規模のデータセンターの平均的な年間電力使用効率(PUE)は1.55だと報告しています。PUEはデータセンターのエネルギー効率を示す数値で、この数値が1に近いほど効率が良いとされます。現在の平均は1.55ですが、2007年の数値は2.50だったので、エネルギー効率が年々向上していると言えるでしょう。
データセンターの運営者が、より効率的なエネルギー利用を目指しており、デジタル技術の高いエネルギー需要に対処するために尽力していることを示しています。
出典:Statista
都市鉱山:グリーンコンピューティングの重要な側面
デジタルサステナビリティとグリーンコンピューティングへの取り組みは、ITインフラの領域を超えて広がります。たとえば電子デバイスの設置面積の削減は、非常に重要な取り組みの1つです。
テクノロジー業界で注目されている考え方に「都市鉱山」というものがあります。都市鉱山とは、使われなくなった電子製品から、貴重な金属を取りだすことを示します。都市鉱山のアイデアにより、私たちの家にあるような不要な電子機器が、資源の貯蔵庫に変わるのです。
「グリーンICT – 家庭内のデジタル デバイス」レポートによると、EUの16歳から74歳のほぼ半数 (49%)が古いスマートフォンを自宅に保管しています。未使用のデバイスがリサイクルされない場合、重大な環境問題と潜在的な資源損失に繋がる可能性があります。
出典:Eurostat
一方で2022年のStatistaのデータによると、100万台のスマートフォンをリサイクルすると、約35274ポンドの銅、772ポンドの銀、75ポンドの金、33ポンドのパラジウムを回収できる可能性があります。しかし、EUにおける古いスマートフォンのリサイクル率は、2022年時点でわずか10%にとどまっています。
上記のような事実は、グリーンコンピューティングの原則に沿った、都市鉱山をはじめとする新たなアプローチの必要性を強調していると言えるでしょう。
出典:Statista
持続可能な未来を目指して:グリーンコンピューティングにおける循環経済の台頭
電子機器廃棄物に対する新たなアプローチが求められる中、電子機器の修理サービスや中古スマートフォンの市場は拡大すると予想されています。グリーンコンピューティングの基本的な考え方である「循環経済への移行」が期待されているのです。
Statistaによると、世界の電子機器修理サービス市場は、2021 年から2022年にかけて増加しました(1109 億ドルから 1217 億ドルへ:+10%)。2022年から2033年にかけては、ほぼ2倍になると予想されています(1217億ドルから2385億ドルへ:+96%)。
上記のような傾向は、電子機器の寿命を延ばすことで無駄を減らし、新しく製品を作る必要性を抑えることに繋がります。
電子機器の設置面積の削減は、都市鉱山というアイデアを考える上で重要なポイントです。電子機器のゴミをうまく処理できれば、環境に良い影響を与えることができます。電子機器の修理サービスや中古スマートフォン市場の拡大は、より循環的で環境に優しいコンピューティングの世界へと進んでいることを示しています。
テクノロジー業界の持続可能性への取り組みには課題もありますが、その努力は良い結果をもたらすこともあります。グリーンコンピューティングと都市鉱山を取り入れることで、テクノロジー業界は環境問題を解決し、より良い未来への道を開くことができるのです。