インターネットの第3世代であるWeb3.0は、ブロックチェーン技術に基づくオープンソースで相互接続されたアプリケーションの集合体といえるでしょう。これらのアプリは分散型のため、中央機関や仲介業者が不要となり、ユーザーが自身のデータや資産を管理しやすくなります。
しかし、Unitea社のCEOケタン・ラハンガル氏によれば、最近Web3.0は一部の不正者により多くの混乱をきたしています。
彼は以下のように述べています。
一部の犯罪者による行為がWeb3.0に対するネガティブな報道を生んでいますが、それだけがWeb3.0の全てではありません。Web3.0は成長段階の市場であり、分散型アプリを懸命に開発している人々がいます。将来的には分散型アプリが消費者にポジティブな影響をもたらすでしょう。
2024年には、ゲーム、不動産、音楽など様々な業界でWeb3.0アプリが登場するでしょう。こうした業界では、分散化、消費者プライバシー向上、ネイティブ決済などブロックチェーンの利点が活用できます。
本記事では、業界の専門家による、2024年におけるWeb3.0領域のトレンドをご紹介します。
Web3.0の最新トレンド7選【2024年版】
Web3.0トレンド⑦:完全分散型プラットフォーム
サリバン・ウースター法律事務所のパートナー、ナタリー・レッドマン氏は以下のように述べています。
メタバースや分散型金融(DeFi:Web3の一部)の主要プレイヤーの多くは、分散型ブロックチェーンに基づいて構築されています。より発展したメタバースおよびDeFiプラットフォームは、その分散化をさらに進化させています。
さらに、彼は以下のように述べています。
Web3.0のプレイヤーは、完全分散型アプリで求められる様々なチェック機能や権力分立を備えた分散型ガバナンスシステムの構築を目指しています。これにより、プラットフォームの意思決定と機能はユーザーの手に移行するでしょう。
Web3.0トレンド⑥:ステーブルコインの利用拡大
「今後数年で、業界を問わず新しいWeb3.0アプリが次々と登場するでしょう」と、税務・会計コンプライアンスのサービスプロバイダーであるTaxBitの副社長兼企業会計事業部長を担う、アーロン・ジェイコブ氏は述べています。
その分野の一つがステーブルコインです。ステーブルコインとは、米ドルやユーロなど法定通貨や他の資産に価値が連動する種類の暗号資産(仮想通貨)です。
ジェイコブ氏によれば、ステーブルコインは他の仮想通貨のように価格が変動しにくいため、安定した価値を維持するように設計されています。ステーブルコインは特に分散型金融アプリを実現する上で重要です。
また、彼は以下のように述べています。
ステーブルコインは、国際送金などを背景に注目を集めています。PayPalが最近自社のステーブルコインを発表したのはその一例といえるでしょう。
さらにジェイコブ氏は、以下のようにも述べています。
ステーブルコインは仲介業者を介さずに国際送金の手数料を削減し、スピードを向上させます。例えばJ.P.Morganが提供する企業向けステーブルコインであるJPM Coinは、企業が数十億ドル相当のトークン預金を移動するのに役立てられています。さらに、規制当局のさらなる指導により、ステーブルコインがより一般的な支払い手段となることも期待されています。
Web3.0トレンド⑤:情報交換におけるプライバシー、セキュリティ、管理の強化
レッドマン氏によれば、先端的なWeb3.0プラットフォームの一部は、オンラインメッセージなどの通信におけるユーザーのプライバシー、セキュリティ、管理性は従来のメッセージングプラットフォームを上回る形になっています。
レッドマン氏は下記のようにも述べています。
ブロックチェーン技術を活用することで、次世代のメッセージングプラットフォームは、ユーザーにエンドツーエンドの暗号化を提供し、自分たちの会話や交換した情報の所有権とコントロールを維持・管理できるようになります。
Web3.0トレンド④:ファッション業界の再定義
現在、デジタルファッションにおけるWeb3.0の最も重要なトレンドの一つは、ブロックチェーン技術、特に非代替性トークン(NFT)の統合です。アートディレクターでありファッション・テクノロジー企業Snezhana.NYCの創設者スネジャナ・パデリーナ氏は以下のように述べています。
NFTはデジタルファッションにおける所有権と真正性の認識を革命的に変え、デザイナーや消費者に独自の検証可能なデジタル資産を提供しています。この技術により、デジタルファッションの排他的で独創的な新しいマーケットプレイスが実現できるのです。
パデリーナ氏は、将来的にWeb3.0が拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの没入型技術と融合し、デジタルファッションの体験が強化されると述べています。
完全没入型の環境で行われるバーチャルファッションショーで、参加者は現実世界では不可能な方法でデザインを楽しめるようになると予想されます。
また、デジタルファッションにおけるスマートコントラクトの使用拡大も今後のWeb3.0トレンドだとパデリーナ氏は付け加えています。スマートコントラクトにより取引やロイヤリティが自動化され、創作者へ正当な報酬が保証されるようになります。
さらに、パデリーナ氏は以下のように述べています。
Web3.0のトレンドは、デジタルファッションをより手の届きやすく民主的なものにするでしょう。ファッション創作と流通の民主化により、独立したデザイナーは従来のファッション業界の垣根を越えて、プラットフォームで作品を発表できるようになるのです。
Web3.0トレンド③:革新的なGameFiゲームの台頭
ゲームと金融の融合を指すGameFiは、注目を浴びつつある新しい分野です。GameFiゲームでは通常、プレイヤーがNFTや仮想通貨で報酬を得たり、ゲーム内でアイテムを購入したり売却できます。ジェイコブ氏は以下のように述べています。
GameFiはゲーム業界を変革する可能性があります。プレイヤーに没入感の高い体験を提供するだけでなく、ゲーム開発者に新たな収入源をもたらすため、今まで興味のなかった層にもゲームを届けることができるようになるためです。
技術の進化に伴い、GameFi開発会社はより新しく、興味深いGameFiゲームをリリースするだろうとジェイコブ氏は述べています。
Web3.0トレンド②:新たなAI(人工知能)のビジネスチャンス
Web3.0の観点でも、AI(人工知能)はユーザーの行動パターンや嗜好、データ分析を通じてカスタマイズされた体験を提供する上で不可欠な要素です。
レダーマン氏は以下のように述べています。
AIはビジネスにとっても個人にとっても重要なトピックであるが、その応用はさらに進化していくでしょう。ユーザーはARやメタバースを活用しながら新しい方法で協力し合い、様々な場面で人々が関与し合うための方法を生み出すことになります。
AI技術の台頭により一部の職業が失われる可能性もありますが、同時にAIシステムの開発者やプロンプトエンジニアなどの新職種が生まれ、新たな規制や役割が求められるようになるのは時間の問題だと彼女は付け加えています。
Web3.0トレンド①:既存資産のトークン化
既存資産のトークン化とは、株式、債券、不動産、コレクターズ・アイテムなどの物理的資産をデジタルトークンに変換するプロセスのことを指します。ジェイコブ氏によると、上記で挙げた領域に注目すべきです。
これらの資産をトークン化することで、流動性が高まり取引が容易になるだけでなく、投資や金融商品の新たな可能性が生まれます。ジェイコブ氏は以下のように述べています。
たとえば、RedSwan(CREマーケットプレイス) は商業不動産のトークン化を進め、取引の透明性と速度を高めています。
既存資産のトークン化により、従来なら同じレベルでこの資産クラスに投資できなかった投資家が、商業不動産投資に参加できる可能性が出てくるのです。
まとめ:Web3.0領域のトップトレンド
Web3.0トレンドは今後、透明性を基盤としたより民主的なアプリケーションエコシステムをもたらすでしょう。利益を追求する企業の思惑に左右されることなく、アルゴリズムの変更やコンテンツのモデレーションをユーザーが制御できます。Web3.0のスタートアッププラットフォームPagodaのエンジニアリングおよびプロダクトリーダーを務めるチャールズ・ギャレット氏が以下のように述べています。
2024年には、多くの人々が、どのブロックチェーンが基盤となっているのかを意識せずに、相互接続されたブロックチェーンネットワーク上の分散型アプリケーションを利用するようになるでしょう。